高齢者を狙った特殊詐欺の手口や手法は年々巧妙化しています。
特に高齢者の中でも「一人暮らし」「認知症高齢者」が特殊詐欺の被害にあわないように生活することはとても難しい時代になっています。
なぜなら認知症はとても厄介な病気で、「自分で自分自身が認知症であると認識できない」からです。
特殊詐欺で失うものは、お金だけではありません。特殊詐欺の被害にあったことを周囲の人に非難され、自死する被害者もいらっしゃり、お金の被害だけでなく二次的な心の被害も発生させています。
最近の特殊詐欺は、高齢者に銀行の窓口から振り込みさせるのではなく、現金やキャッシュカードを自宅まで受け取りに来るケース、宅配便で現金を送付させるケース、郵便局のレターパックという封筒を使って現金を送付させるケースが増えています。なぜなら、高齢者が銀行の窓口で振り込みする場合は、銀行が支払い内容の確認をするので、振り込みによる詐欺が難しくなっているからです。
総額3,980万円も騙し取られた一人暮らしの高齢女性の例
中国新聞の報道によると、2019年、広島市安佐北区で一人暮らしをしている80代の女性が特殊詐欺の被害にあいました。犯人は被害者へ次のことを電話で話したそうです。
「広島に建設する介護福祉施設に入居できる権利がある」
「入居する意思の有無にかかわらず、入居費用を支払う必要があり、支払わなければ刑務所に入ったり、財産を差し押さえられたりする」
その電話の後、6回もその被害女性の自宅に来てお金をだまし取り、その被害額は合計3980万円にものぼるそうです。老化で判断力が低下すると、このようなウソがわからなくなるのです。 もしかすると、ウソに気がついたけど脅迫されており、誰に相談すればいいかわからず、目の前の犯人が怖くて払ったのかもしれません。
犯人たちは、高齢者の老化による「判断力の低下」と「一人暮らしの状況」を巧妙に利用しているのです。
実はあまり知られていない身近な特殊詐欺
数千万円単位の事件については大きく報道されますが、被害額として100万円~300万円くらいの事件は、中国新聞の片隅に記事が小さく掲載されます。
紙面は毎回「絶て特殊詐欺」というタイトルです。最近は、毎日のように中国新聞に「絶て特殊詐欺」の記事が掲載されます。
その記事を毎日見ていると「他人事ではなく、明日は自分がニセの警察官に騙されるかもしれない」と感じます。
警察庁の統計では、特殊詐欺による高齢者の被害額は日本国内で毎年数百億円以上であり、広島県警の発表では、広島県内だけでも毎年2億円以上の被害が出ています。
特殊詐欺の被害者の約9割が高齢者です。老後のために真面目に働いてきた人の財産をだまし取る犯人を許せないのはもちろんのことですが、このような犯人が世の中にたくさんいる現実と向き合って、自分を守る方法を自分で考えないといけません。
特殊詐欺から自分と家族を守るためのノウハウ
では、誰でもだまされるほど巧妙な特殊詐欺の被害に遭わないために、どのような対策をすれば良いでしょうか?すぐにできる対策と任意後見制度の活用方法をご紹介します。
対策1:固定電話解約と携帯電話一本化
認知症のリスクが高まる70歳になるまでに、以下の対策を取りましょう。
1. 固定電話は誰からかかってきたのか判別しにくいという欠点があり、特殊詐欺被害にあうリスクが高いと考えられます。そのため、回線そのものを解約して固定電話を撤去し、携帯電話に電話を一本化することをおすすめします。
2. 携帯電話は電話帳機能を活用し、あらかじめ電話帳に登録した番号からしか電話がかかってこない設定にしておきましょう。これにより、知らない人からの電話を防ぎ、特殊詐欺のリスクを減少させることができます。
3. 固定電話を解約したくない、携帯電話を持っていない等の場合は、詐欺防止機能や防犯機能がある固定電話への買い替えをご検討ください。
対策2:任意後見制度の利用
任意後見制度は、成年後見制度の一部です。
この制度を活用するには、任意後見契約を認知症になる前に信頼できる人(個人や法人)と結んでおく必要があります。
任意後見契約を締結しておけば、将来重度の認知症になった場合に、その契約を結んだ人が後見人となり、後見人の仕事をしてもらうことができます。親族等ではなく、終活サポート事業者や司法書士、行政書士などが任意後見人となるケースも増えています。
ただし、認知症になる前に、信頼できる人と、公証人役場で公正証書で契約しておかないと法的な効果がありません。認知症に備え、特殊詐欺被害防止のために、信頼できる人と公証人役場で任意後見契約および委任契約(見守り契約)をしましょう。
任意後見制度の申し立て手続きの流れ
1. 任意後見契約を、本人と将来の任意後見人が、公証人役場で締結
2. 任意後見契約後、将来の任意後見人が、本人を見守り
3. 本人の判断能力が低下したと医師が診断したら、将来の任意後見人が、家庭裁判所へ任意後見業務を開始することを申立て
※任意後見人が業務を開始するためには、本人の同意が必要です。つまり、たとえ医師が認知症と診断しても、本人の同意がないと任意後見業務は開始できません。
4. 家庭裁判所で、本人の判断能力の低下および本人の同意を確認したら、任意後見人が後見業務開始
5. 任意後見人の業務を、家庭裁判所が選任した任意後見監督人(第三者の弁護士など)がチェック
6. 3か月に一度、任意後見監督人へ、任意後見人は業務報告(本人が逝去するまで継続)
特殊詐欺の手口と対策についてのまとめ
前述の対策1「固定電話解約と携帯電話一本化」は、すぐに実行しやすいですが、対策2「任意後見制度の利用」は、手続きに時間を要します。対策2を利用するためには、任意後見契約を、認知症になる前に、信頼できる事業所と公証人役場で公正証書で契約しておく必要があります。
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